なんとなく

ゆっくりと近づいて来た台風が街中をすっぽり覆っている。

窓の外は暴風と大雨が横に斜めに吹き荒れていつもなら見えるはずの遠くの灯りがミストのベールでどこにあるのかさえわからない。

まだ、しばらくこの雨は止まないそうだ。

子供の頃は本当に恐ろしかったこんなライブチャットもいつの頃からかそれを心地好いと思いどこかで楽しんでしまうようになった。
昔、祭囃子を聞いた時のように心がじんわりと踊ってしまう。

車の運転をするようになってからは更にこの気象が好きになった。
ワイパーの効かない大雨の中。

前も後ろも横も視界の閉ざされた車中で路肩に車を停めたまま彼女と話をするのが好きだった。

空き地に転がった土管の秘密基地でドキドキしながら雨宿りした時の様に。
ここがどこなのかわからなくなる。

ここではないどこかにいる気がする。
この世界に二人きりしかいないような気がして急に愛しさが込み上げてくる。

閉じ込められているのに甘酸っぱい空間。

白い靄の向こうで閃光が走る。
少し遅れて雷鳴が鳴った。

明日になると青空が何事も無かったかの様に街中を照らすのだろうか。

真夜中に一人で窓の外の嵐を眺める。

住んでいる家も持ち物も変わったけど相変わらず同じ事を考える。

『ずっとライブチャットばいいのにな』

快晴の昼に思う事より嵐の夜に染み込んでくる感覚が好きだ。

太陽の日差しに微笑む人よりどしゃ降りを歩いている人に興味がある。

すべての近代的な事が自然現象にもろくも負けてしまっている状態に安らぎを感じる。

それはこれからも変わらないと思う。